日本における災害
ご存じのように日本は災害が多い国です。実際に大きな災害を経験した経験のない人でも、大地震や豪雨による洪水や津波で建物が流される映像をニュースで目にした人は多いのではないでしょうか。
多くの人が長期ローンを組んで夢のマイホームを購入するのですから日本に住んでいる以上、正しい災害の知識をもち備えをすることは必要不可欠といえます。
そこで、今回は『地震』における建物の被害を少しでも軽減する方法をご案内いたします。
目次
地震が起こる確率が高い場所は?
日本は地震大国です。最大震度7が観測された1995年の「阪神淡路大震災」以降、「新潟中越地震」・「東日本大震災」・「熊本地震」など、震度7を記録する地震が数年ごとに起こっています。こんなに地震が多い国は世界を見てもなかなか見当たりません。
地震発生のメカニズム別では、「阪神淡路大震災」の様に、「活断層」のずれから比較的狭い範囲で大地震が起こる「活断層型」地震と、「東日本大震災」の様に大陸プレートのずれから広い範囲で大地震が起こる「海溝型」地震があります。
活断層は日本全国様々な場所を通っていて、かつ、まだ未発見のものも多くあるといわれていますし、「活断層型」地震は予測が難しいとされています。
逆に「海溝型」は大陸間プレート同士が押し合って起こるもので、予測がしやすいといわれています。
甚大な被害を出した「東日本大震災」ですが、実は地震発生当時、30年以内に99%の確率で大地震が発生すると予測されていて、本当にいつ起こってもおかしくない状況でした。
一方で、3日間で2度の震度7を記録した「熊本地震」や「阪神淡路大震災」は、活断層があるのはわかっていたものの、高確率での予測はされていませんでした。
それでは、今地震発生確率が高いと予測されている場所はどこでしょうか。それは「南海トラフ」地震です。
静岡県から九州まで「フィリピン海プレート」と「ユーラシアプレート」と呼ばれる大陸同士が重なっているひずみができている部分があり、そこがいつずれて大地震が起こってもおかしくない状況です。「東日本大震災」の様に広い範囲での被災が想定されています。
国の試算では「南海トラフ」地震での最大死者想定は32万人です。
「東日本大震災」での死者・不明者合わせて1万8,000人でしたので、その地震規模の大きさは想像を遥かに超える恐ろしいものと言えるでしょう。
静岡県沖から九州までのいわゆる南海トラフと呼ばれる場所で地震が発生した場合、都心での被害も十分考えられます。都心部在住の方も含め、日ごろから地震が起こったらどうするかを考え備えておくことが大切です。
大地震が起こった場合、家はどうなる?
さて、地震の発生確率の話が長くなってしまいましたが、それでは、大地震が起こったら今住んでいる家はどうなるでしょうか?
これは、家を建てた年代や作り方などによって違います
現在の建築基準法での住宅を建築してよい「最低基準」は「数百年に1度の大地震(震度6強から7を想定)時に倒壊・崩壊しない程度」という指針があります。
この新耐震基準は1981年6月1日から施行されたので、この日以降に確認申請を受けて建築された建物は新耐震基準が採用されています。しかし、それ以前の建物は耐震補強などをしないといけないものも多くあります。
また、1981年6月以降の建物でも、大地震が起こった場合、倒壊してしまう住宅が多くあります。
これは何故かというと、現在の耐震基準は「耐震等級1」ですが、これは“震度6強から7の地震に倒壊はしない”=『1回は耐えられる』という基準です。
大地震発生時に人が建物の下敷きにならずに“逃げる時間を作る”という原則からつくられています。
「耐震等級」は1から3ランクまであり、「耐震等級2」は「1」の1.25倍(学校・病院などの緊急避難所レベル)「耐震等級3」は「1」の1.5倍(警察署や消防署などの救護活動や災害復興を行う施設)
熊本地震は3日で2回の震度7の地震が起こったため、たくさんの建物が倒壊しました。
また、柱と梁を止める金物があり、これの強度が弱っていたり、経年や振動などでボルトナットが緩んでしまっていたりすると、当初の耐震基準が維持できていないケースもあります。他にもリフォームなど、具体的にはエアコン設置時に構造上大事な筋交いという部材に穴をあけてしまうことで耐震性が低くなってしまいます。
購入すべき住宅の基準
では、大地震を想定した場合、どのような住宅を購入すればよいでしょうか。
住宅の構造は大きく分けて、耐震構造・制震構造・免震構造3つあります。
「耐震構造」はその名の通り、柱と梁などの構造躯体で地震に耐える構造
「制震構造」は「制震ダンパー」を壁の一部に入れ、揺れの一部を吸収する構造
「免震構造」は地面と建物の間に「免震装置」を入れ、揺れを軽減させる構造
その中で、大地震が起こっても安心な建築物は、
- 耐震等級2以上のマンション
- 耐震等級2以上+制震構造の戸建て
- 耐震等級3の戸建て
- 免震構造の住宅
3日間で2回の「震度7」が起こった「熊本地震」では築浅の「耐震等級2」の一戸建てが倒壊してしまっている事例がありました。
この「熊本地震」以降、震度7が何回来てもおかしくないと分かった為、CMなどで「震度7の地震に〇〇回耐えました」ということをアピールしている会社もあります。(私が勤めている会社も「実大振動実験」という震度7の地震の揺れを耐震等級3の戸建て住宅に10回与えても建物は大丈夫だという実験をしていました)
また、「東日本大震災」では仙台の「耐震等級1」マンションで、壁に亀裂が入る状態の建物が多くありました。
マンションは「雑壁」という主にバルコニー側と廊下側に使われる壁をあえて割れさせることて、地震のエネルギーを逃がして倒壊しない様にするという構造になっているものが多くおります。そのため壁が壊れても構造上の問題はないのですが、壁の亀裂を直すのにも費用が必要です。
こういった現象を目の当たりにした仙台では、現在ほとんどのマンションが「免震構造」で建築されているのです。
「免震」構造は首相官邸や大病院にもつかわれている工法で、地震の揺れを建物に伝えない工法ですので、非常に安心です。しかし、その分建築コストが大きく、近年タワーマンションなどの高層建築物では増えてきていますが、戸建て住宅にはほとんど使われえていません。
これらの事から、地震対策として一番安心できる構造は
マンションの場合「免震構造」
戸建ての場合「耐震等級3」もしくは「耐震等級2以上」+「制震構造」
であるといえます。
地盤について
また、地震が起こった際に建物への影響を与えるもので土地の「地盤」があります。
地盤が悪いと地震のエネルギーを増幅させてしまい、同じ地震でも被害が大きくなります。
地盤が良い・悪いというのは「地盤調査」でわかります。
地盤調査専門会社の「ジャパンホームシールド」が「地盤サポートマップ」というwebサイトを運営しており、周辺の地盤調査事例を確認することができます。
誰でも閲覧することが出来るものではありませんが、ほとんどのハウスメーカーやマンションデベロッパーが登録していますので、購入を検討している会社に確認をされるとよいでしょう。
また、地盤が悪いからと言って、その土地がよくないかというとそんなこともなく、適切な地盤補強や杭をしっかりと硬い岩盤までいれることで、リスクを軽減させることもできます。
メーカーなどと相談して、しっかりとした対策をとっていきましょう。
液状化について
地下水に浸った緩い砂地盤が地震動によって液体の様に流動化することを「液状化」といいます。
液状化しやすい土地として、海岸や河川の近く、比較的新しい埋め立て地や旧沼地や池、沢を埋めた盛土の造成地などがあります。
ひとたび液状化が起こると、道路の地盤沈下や、建物が傾いてしまうこともありますので注意が必要です。
それでは、地盤沈下を防ぐためにはどうしたらよいでしょうか?
(当たり前ですが)地盤沈下危険度のある土地を購入しない。
これが一番安心です。各自治体が液状化危険度予測を発表しています。こちらを確認した上で不動産を購入するようにしましょう。
建物を杭で堅固な岩盤まで固定する。べた基礎で建物荷重を分散化する。
地面の下に液状化しやすい地盤があっても、そこを超えてさらに下の堅固な岩盤まで杭で固定することで液状化してしまったとしても、建物の傾きは抑えられる確率が高まります。
また、一戸建てなど、比較的軽量の建物の場合、ベタ基礎にして建物の変形を防ぐことが可能です。
地震保険に加入する
火災保険に付随する「地震保険」によって、液状化で建物に傾きや損壊があった場合、保証の対象になります。
地震保険は火災保険額の半分が上限額として設定されており、さらに症状によって保険金額が異なりますので、全ての補償がされるとは限りませんが、それでも絶対に加入しておきたい保険の一つです。
以上が液状化対策となります。
これまでお伝えしたように、大地震が起こると建物被害に加え、地盤被害を受ける可能性もあります。2020年8月28日から始まった「水害リスク説明の義務化」に比べ、「地震リスク」は不動産会社からの重要事項での説明義務はありませんので、自己責任で調べることが重要です。
しっかり調べた上で、安心な住まいを購入しましょう。
次回は「水害」についてお伝えしていきます。