人事部門にて企業内メンタルヘルスを推進し、数多くのメンタル不全の方々のフォローをしてきた経験から、職場の人間関係で悩んでいる人へ役立つ情報を届けていきます。
とにかくイライラして腹が立ってしかたないんです。
怒りの感情はとても強いものです。自分自身がその感情によって疲れ果ててしまわないようにしたいですね。
目次
はじめに
人の感情には、喜び、悲しみ、怒り、諦め、驚き、嫌悪、恐怖などがあります。
その中でも怒りは何かに反応して呼び起こされる強い感情です。
人生を壊してしまう感情ともいえるかもしれません。
そして人間関係だけでなく私たちの健康にも悪影響を及ぼします。
心と体は密接に関係しています。
怒りや不安などのストレス状態が続くことでうつ病といった心の病気だけでなく、頭痛、めまい、高血圧、心臓病、胃痛、下痢・便秘、腰痛、更年期障害など、さまざまな病気を引き起こすと言われています。
社会生活の中ですべてのストレスを避けることはできません。
だからこそ怒りや不安といった負の感情を出来るだけ抑え、またはできる限り短い時間にして心を穏やかな状態に保つようにすることが大切です。
本記事は、「最近いつもイライラしている」「自分でもどうしてこんなに腹が立つのかわからない」「自分があまりに不甲斐なくて腹が立つ」などの怒りの感情で悩んでいる方へ、上手に怒りと付き合うための対処法をご紹介します。
人はどうして腹を立ててしまうのでしょうか。
人が怒りを感じる仕組みをアンガーマネジメントの視点を用いてご説明します。
アンガーマネジメント
アンガーマネジメントとは1970年代にアメリカで生まれたとされている怒りの感情と上手に付き合うための心理教育、心理トレーニングです。
近年日本でも多くのメディアで紹介されています。多数の書籍が出版され、キャリア形成の一つとして管理職研修の中で部下マネジメントの一つとしても注目されています。
怒りの正体は自分の中の「こうあるべき」「○○すべき」
怒りは、自分の中の「〇〇すべき」という価値観や行動基準です。
その基準が裏切られたときに、怒りが発生します。
今年も新入社員研修を終えたばかりの新卒Aさんが、7月1日、自部署に配属されてきました。何となくうつむき加減で挨拶もろくにできません。次の日もボソッと蚊の鳴くような声で挨拶が聞こえるくらいです。次の日は、こちらから挨拶をしましたが、頭を傾ける程度…。
あなたならどう感じるでしょうか?
「新人が元気に声を出して挨拶するのは当たり前だろう!」
「こちらから声をかけているのに返してこないなんてあり得ない!」と怒り奮闘でしょうか。
それとも、「配属されたばかりで緊張しているのかな。」「色々不安で気が回らないのかな。」「少し様子をみてみよう。」と思うでしょうか。
この反応の違いはまさに、「〇〇すべき」という考えからくるものです。
前者は挨拶などの礼儀礼節を重要視しているのに対し後者は絶対すべき!とまでは考えていません。
こういった自分の価値基準が明確だったりこだわりが強すぎると、イライラすることが多くなってしまいます。
これは、怒りの”癖”や”習慣”です。
しかし自分のこととなると意外とわからないものです。
怒りに感情を支配されている状態では、冷静に自分がどうしてこんなに腹を立てているのかを自覚することはなかなかできません。
自分以外の人に対してはあの人はこうゆう場面でいつも怒るな~とか怒りっぽいな~とかがよくわかるものです。
人はお互いをよく観察しあっているものです。
そしてこういった怒りの傾向はだれにでもあるものなのです。
”自分のべき”と”相手のべき”は違うということを認め、許容範囲を広げる努力をすることが大切です。
アンガーマネジメントとの出会い
私自身若いころ、些細なことで腹が立って周りにあたってしまったり、一気に怒りの沸点がやってきて怒りの感情をコントロールできずに人間関係に波風を立ててしまうことが多々ありました。
自分はどうしてこんなにいつもイライラしてしまうのだろう、、
何で人を傷つけるような嫌な怒り方をしてしまうのだろう、、
と、いつも気が立っている自分が嫌で仕方ありませんでした。
自分の怒りの感情に振り回されてへとへとになっているとき、ふと隣の人を見ると同じ状況や環境にも関わらず我慢している様子もなく笑顔で同じ時間を過ごしていることに気が付いたのです。
自分は腹が立って仕方がないことやありえない!と思う人に対してもケロッと何食わぬ顔で感情の波をたてることなく過ごすことができる人がいるのです。
私も怒りの感情に支配されずに良好な人間関係を築いて平穏な気持ちで過ごしたい!!
そう考えて色々調べている中で出会ったのが”アンガーマネジメント”でした。
本当に困窮していた私にとって”怒りの”感情がコントロールできる”というアンガーマネジメントは目からウロコ!でした。
そして今まで悩んでいた人間関係が劇的によくなっていくのを実感することができました。
感情のコントロールと聞くととても難しくかんじるかもしれませんが、怒りの対処法はとてもシンプルです。
まず自分自身の怒りの癖などの特徴、タイミング、習慣を客観的に知ることです。これがわからないままでは対処の仕様がありません。
自分の怒りのポイントを自覚することができれば、その外側に向ける怒りの癖を直すことができます。周りに与えていた負の影響を変えることができるのです。
本記事を読んで、より良い人生を歩んでいく助けになりますよう。
アンガーマネジメントの目的とは
「怒り=悪いこと」なのでしょうか。
そうではありません。怒りは敵からの身を守るための防衛本能だったり、怒りが持つ強いパワーが目標達成のための原動力になることもあります。
アンガーマネジメントは、怒らなくなるための方法ではなく
①怒る必要のあることは上手に怒る
②怒る必要のないことは怒らなくてすむようになる
怒らなかったことへの後悔と、怒ってしまったことへの後悔をなくすための方法です。
自分を含む”人”を傷つけることなく怒りの感情をコントロールすることで人間関係を壊さずに意図的に怒りの感情を表現することを目的としています。
下記の怒り方の中で一つでも当てはまるものがあれば注意が必要です。
①激高タイプ
些細なことで周囲が驚くほど強く怒ってしまう人
②根に持つタイプ
昔のことをずっと怒り続けたり、思い出してはイライラし続ける人
③攻撃的なタイプ
人やモノにあたり、人を必要以上に責めたりモノを壊したりする人
④頻度が高いタイプ
とにかくいつもイライラしている人
怒りの仕組み
怒りは二次感情です。
一次感情として「悲しみ」「不安」「つらさ」「寂しさ」「心配」「絶望感」「苦しさ」といったネガティブな感情があります。
つまり、怒りの感情はそれだけで存在しているものではありません。
怒りを感じる前に他の感情が存在しています。
この怒りのメカニズムは、コップの水に例えられます。
最近イライラしやすい、今日はなんだか機嫌が悪い、ということはありませんか?
それは、心のコップにこの一次感情がみたされている状態です。不安や疲れなどの感情が溢れると怒りとして現れてしまうのです。
この一次感情を知ることで怒りを抑え冷静になることが出来ます。
怒りへの対処法
怒りの見える化
イライラしたことをノートや日記に記録してください。
感情的になってしまうと一次感情に目を向けることは難しいですし、時間が経つと忘れてしまいがちです。
都度書き留めることによって、自分のイライラする癖や特徴を把握することができます。
自身の怒りに対するマネジメントができれば、怒りに流されず冷静になれたり不要な怒りの感情を避けることができます。
イラっときたら6秒数える
怒りの感情のピークは6秒程度と言われています。
6秒をやり過ごすことができれば、反射的に引き出された怒りの感情を落ち着かせることができます。
あらかじめ心の中で「大丈夫、大丈夫」など6秒のあいだ唱ええる言葉を用意しておくことも有効です。
怒りの温度を点数にする
怒りを10段階のレベルに分けて数値化します。
1~3は「軽い怒り」、4~6は表面的には繕っていてもイライラした気持ちが残る「少し強い怒り」、7~9では憤りを感じる「強い怒り」、10になると「人生最高の怒り」です。
点数をつけると怒りを客観視することができ怒る必要があるかどうかの判断ができるようになります。
また点数をつけ続けることで、その点数のときにどのように対処するか対策を立てることができます。
ムカッと来たら少し立ち止まり、その怒りがどれくらいのレベルなのかを考えてみましょう。
三重丸を頭に描いて整理する
思考のコントロールを図のような三重丸で表します。
怒りのピークをやり過ごした後、頭の中に三重丸を描きます。
三重丸は「自分と同じ」「自分と違うが許容範囲」「自分と違う・許容できない」の3つのゾーンで構成されています。
人は、②か③のどちらかのときイライラします。
②は怒る必要のない許容範囲ゾーンのはずです。
しかし相手の好きか嫌いかや自分の機嫌や都合で怒ってしまうケースが多々あります。
自分の都合で②の「自分と違うが許容範囲」のゾーンを小さくせずに安定させ、許容範囲を広げていく努力が大切です。
この②の領域を広げられるようになるとイライラすることが減り、他人との価値観の違いを受け入れられるようになります。
とはいえ、全てを受け入れて許す必要はありません。
「許せること」と「許せないこと」の領域をあいまいなままにせず境界線を明確にしていきましょう。
最後に
繰り返しになりますが、アンガーマネジメントは”怒ってはいけない”というものではありません。怒るときと怒る必要のないときの区別をすることが目的です。
感情のままに怒って後悔しないためにも、6秒(落ち着く)、点数(可視化)、三重丸(整理)を上手に使い問題に対処しましょう。